獣医師の将来性はある?今後の需要と年収を上げていくポイントを解説

獣医師に将来性はあるかな」と気になりますよね。獣医療技術の発展から、長期的なペットや畜産業の衰退など、先行きが不安になるのも自然です。

この記事では小動物臨床獣医師である筆者が「獣医師の将来性」から「年収を高めていくポイント」までを網羅的に解説していきます。

この記事のまとめ
  • 緩やかに落ち込むが、需要は十分に高い
    全体では均衡する見通し。ただ地域や職域によるので見極めが肝心(特に、都心部の小動物診療は、競争が激化する傾向にある)
  • 収入UPなら転職エージェントがおすすめ
    人手不足の産業動物診療か、高度な獣医療技術を身につけていくと収入を上げやすい。転職エージェント(例:vetagent)にキャリア相談をしてみよう。
目次

獣医師の将来性は十分ある

まず結論として、獣医師に将来性は十分あります。獣医療技術が発展しつつありますが、利用する側の獣医師が不要となることはありません。

獣医師の需給の「現状」と「予測」
  • 【現状】
    求人倍率は十分高く、就職しやすい
  • 【予測】
    現状の供給数で今後ともほぼ均衡する

また、大きい流れとして人口減少に伴った「畜産業/ペット産業の衰退」も懸念されますが、これから数十年かけて緩やかに減少していくので、あなたが現役の期間は大丈夫です。詳しく見ていきましょう。

獣医師の将来性#現状
求人倍率は十分高く、就職はしやすい

まず、直近3年間における獣医師の有効求人倍率は以下の通りとなっています。比較的高いですね。

  • 2020年【1.57倍】
  • 2021年【2.01倍】
  • 2022年【1.70倍】

有効求人倍率は「求職者1人に対する求人数の割合」を示しているので、数字が大きいほど「就職しやすい」ということになります。

日本の全職種平均が【1.1〜1.3倍】ほどになるので、獣医師は比較的就職しやすいと言えますね。ただ、動物病院だと1求人しか出ないので、場所を絞りすぎると見つけにくいかもしれません。

特に、畜産分野の獣医師が不足している

産業動物分野においては、すでに獣医師の人手不足が問題となっています。産業動物分野とは主に、以下の獣医師のことです。

  • 牛や馬、鶏など家畜の治療をする獣医師
  • 都道府県に所属し、家畜衛生に携わる獣医師

人手不足の理由としては、近年、口蹄疫や鳥インフルエンザ、豚熱など、家畜伝染病の発生が増加し、防疫を担う獣医師のニーズがますます増加していることが挙げられます。あと都心部にないので「若い獣医からの人気がない」というのも理由としてありますね。

補足:農林水産省も対策していく方針

農林水産省としても「畜産分野の獣医師不足」を問題視しており、対策が進められていくと思われます。現時点の大枠方針は下記の通り。

  • 公務員獣医師の確保
  • 家畜伝染病に対する危機管理体制の構築

人手不足が深刻化すればするほど、給与や待遇改善などが行われる可能性が高まるので、「将来性」という意味では、一定の期待ができるかもしれません。

出典:令和2年 農林水産省「獣医療を提供する体制の整備を図るための基本方針

獣医師の将来性#予測
現状の供給数で今後ともほぼ均衡する

日本獣医師会による“2040年までの獣医師需給”に関する見解では、下記が言及されています。

①全体需給は現状の供給数で今後ともほぼ均衡するが、②職域別にみると、今後個別の需給政策配慮が払われない場合、産業動物診療獣医師の不足が深刻化し、一方、小動物診療獣医師の過剰が顕在化する。

日本獣医師会 今後における獣医師需給

獣医師全体では変わらないものの、地域や職域によっては、獣医師の過不足が見られるという見通しですね。特に、地方の産業動物診察に従事する獣医師が不足していくことが懸念されています。

補足:農林水産省の獣医師の需給に関する検討会報告書

なお、農林水産省が公表した「2040年までの獣医師の供給数と必要獣医師数」の調査(2007年)では、下記4つの主張がなされています。

  • 現状値推計においては、ほぼ全体需給は均衡する
  • 犬・猫の診療回数が10%〜20%伸びる場合、1,600人から3,500人程度獣医師が不足する
  • 一方、犬・猫の診療の効率化を勘案した場合、①診療回数が現状値で推移した場合、1,000人から1,300人程度獣医師が過剰となる。②犬・猫の診療回数が伸びる場合、10%の伸びで需給は均衡するが、20%の伸びで1,900人程度獣医師が不足する。
  • 産業動物診療獣医師の不足が発生する。畜産分野、公衆衛生分野の公務員獣医師の確保が困難化する

出典:獣医師の需給に関する検討会報告書

①④に関しては日本獣医師会と同様の見解です。しかし、②は「犬猫の診察回数が10~20%伸びた場合」という仮定が非現実的であるとして、日本獣医師会から批判されています。(出典:今後における獣医師需給

まとめると、あくまで予測ですが「全体の需給はそう変わらない」「地域や分野によっては過不足が起きる」という見通しです。

獣医師としての将来性を高める方法

獣医師として長期的に活躍し続けるためにも、昨今の情勢を踏まえて、下記のいずれかを検討してみることをおすすめします。

  • 専門的な獣医療技術を身につける
  • 認定医の資格を取得する
  • 年収が上がりやすい職場へ転職する
  • 動物病院を開業する

獣医師としての将来性を高める方法#1
専門的な獣医療技術を身につける

近年は、獣医療技術の発展(CT、MRIのような先端医療や専門科診療)とともに、幅広く高度な獣医療の需要が高まっているので、技術があると有利になります。農林水産省の獣医療方針にある通りです。

(前略)そのため、これらの取組を支える獣医師に対する国際的・社会的ニーズと果たすべき責任の急速な増大とともに、それを担う獣医師の養成・確保が必要となっている。

(中略)獣医療技術については、獣医学の進展、診療機器及び医薬品の開発・普及等に対応して、今後ますます高度化・多様化することが見込まれる

(令和2年 農林水産省「獣医療を提供する体制の整備を図るための基本方針

例えば、以下のように「得意分野のある獣医師」は、様々な動物病院で活躍できるので市場価値が高くなります。(転職時に年収を上げやすいです。)

  • 心臓病に関する知識が豊富
  • 骨折の整復術など整形外科が得意
  • 抗がん剤や腫瘍摘出術など腫瘍科に詳しい
  • ウサギやインコなどエキゾチックアニマルに対応可能

また当然ですが、総合臨床医の場合でも、自ら進んで新しい知見を学び、多くの症例を診察できる獣医師ほど需要は大きくなります。自身の将来性を高めるためにも、多くの経験を積み、高度な獣医療に対応できるようスキルアップしていきましょう

新たな学術的知識や技術を学び、治療効率をあげることで、担当症例が増えて、治療成績の向上にもつながりますよ!

獣医師としての将来性を高める方法#2
認定医の資格を取得する

「認定医」とは、各獣医学会において定められた知識や技術、経験を満たす獣医師のことです。具体的な資格には、下記のようなものがあります。

スクロールできます
資格名難易度取得の恩恵コメント
JAHA認定総合臨床医★★☆2★★☆2総合臨床医として、獣医療のスタンダードを理解していることを認定する資格。若手獣医師でもチャレンジしやすい。
動物循環器認定医★★★3★★★3動物の循環器専門家を養成するための資格。
認定試験を受験するには、厳しい審査をクリアする必要あり。
獣医腫瘍科認定医Ⅱ種:★★★3
Ⅰ種:★★★3
Ⅱ種:★★★3
Ⅰ種:★★★3
腫瘍診療のための専門知識や診断・治療スキルを持つ事を示す資格。難易度に応じて、Ⅰ種とⅡ種の2種類がある。
獣医皮膚科学会認定医★★★3★★★3獣医皮膚科学会主催の講習を修了し、所定の基準を満たすことで認定される。試験受験には、学会・論文発表に加えて、海外での学会参加も必要。
獣医画像診断認定医★★★3★★★3筆記試験と実技試験に合格し、獣医画像診断学会に画像診断技術を認められることで取得可能。取得者は日本全国で40名とおらず、難易度が高い。
獣医師の認定医資格一覧

このような「認定医」の資格は、飼い主の病院選びに大きな影響を与えるので、評価や転職時にも有利になります

前述した「専門的な獣医療技術を身につける」という意味でも優位になるので、ぜひ自分の関心がある分野があれば、認定医取得を目指してみてください。

認定医の取得は簡単ではありませんが、その分、飼い主や他の獣医師からの信頼性を得ることができて、収入も上げやすいのでおすすめです。

獣医師としての将来性を高める方法#3
年収が上がりやすい職場へ転職する

また、より「年収が高い職場」に転職するのもおすすめです。当然、施設や職種によって年収水準は異なりますし、動物病院ごとでも年収差があります。

下記のように様々な転職先があるので、一度見てみると良いでしょう。

  • 小動物臨床
  • 産業動物の診療
  • 公務員
  • 動物園・水族館・競走馬関係
  • 研究職   etc.

また、産業動物分野では、獣医師不足を背景に、出産や育児などで離職した女性獣医師に対して、復職のための支援も行っているケースが多いです。

ぜひ一度、獣医師の求人に特化している転職エージェント(例:vetagent)に相談してみて「どのような求人があるか」だけでも確認してみてください。

獣医師としての将来性を高める方法#4
動物病院を開業する

難易度が高いので軽い紹介に留めますが、一定の開業資金があるのであれば、動物病院を開業して経営の道へ進むのもアリです。

動物病院開業のメリット
  • 経営次第では大きく稼げる
  • 勤務時間を自分で決められる
  • 自分の理想とする診療ができる

しかし、デメリットとして、経営リスク、資金調達、院長としての責任、経営や労務など診療以外の業務の必要性などがあるので、興味がある場合は、適性も含めた慎重な判断をしてください。

まとめ|よくある質問

この記事のまとめ
  • 緩やかに落ち込むが、需要は十分に高い
    全体では均衡する見通し。ただ地域や職域によるので見極めが肝心(特に、都心部の小動物診療は、競争が激化する傾向にある)
  • 収入UPなら転職エージェントがおすすめ
    人手不足の産業動物診療か、高度な獣医療技術を身につけていくと収入を上げやすい。転職エージェント(例:vetagent)にキャリア相談をしてみよう。

最後によくある質問に回答していきます。

  • AIに仕事を奪われない?
  • ペットの高齢化で診察需要は増える?

AIに仕事を奪われない?

結論として、奪われることはありません。なぜならAIは獣医師資格を持たないので「医療行為」ができず、医療判断における「責任」を負うこともできないからです。

例えば、獣医師免許が必要な「外科手術」や「抗がん剤の投与」などはできません。医療ミスが起きてもAIは謝罪するだけです。誰が大事なペットを任せたいと思うでしょうか。そのため「治療の責任者」としての役割は、人間である獣医師が果たす必要があります。

ただ、一部業務の最適化は進んでいく

AIの性質からして、多くのデータがとれて、過去症例から判断を導きやすい「検査・診断」の場面から、優先的に活用されていくはずです。

  • 尿検査の自動化と診断
  • 血液検査の結果から診断コメントを提示
  • 超音波検査の測定値を自動計算
  • 心臓病の発見に有用なAIを搭載した聴診器

AI技術を本格導入するなら人手が足りていない畜産分野からになるとは思いますが、効率と正確性の向上に期待できます。

ペットの高齢化で診察需要は増える?

高齢になると病気にかかりやすくなるので、一定の増加は見込めます。「全国一律で10~20%増える」とまでは言いませんが、数%なら見込めるでしょう。

ペットの高齢化が進んでいる

一般社団法人ペットフード協会は、2022年における犬・猫の平均寿命が、2010年と比べて延びていることを発表しました。(全国犬猫飼育実態調査(2022年)

  • 犬の平均寿命14.76歳(2010年比+0.89歳)
  • 猫の平均寿命15.62歳(2010年比+1.26歳)

また、現在日本で飼育されている犬と猫のうち、7歳以上のシニア期の割合は、犬で54.3%、猫で43.5%と言われています。

高齢になるとかかりやすい病気
  • 心臓・腎臓・肝臓などの内臓病
  • 腫瘍性疾患
  • 脳梗塞
  • 白内障
  • 認知症や夜泣き

など、通院や治療、介護など、動物病院を受診する機会が増えるため、獣医師の存在は今後も必要です。

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