獣医師の離職率は高いってホント?転職する時のポイントも解説

獣医職についている人の離職率を正確に示すデータはありませんが、ある大学の調査で小動物臨床医は60%が1年目で離職しているという報告があります。

また、大動物臨床獣医師は3年目で3割、5年目で5割が離職しているという報告もあります。特に臨床医での離職率が高いので、各年代で離職・転職を考えるポイントを解説していきます。

目次

年代別にみた獣医師の就業者数の推移

2022年度の獣医師法第22条に基づく届出を業種別に示したグラフです。

小動物臨床の女性獣医師は40代から50代になると約半数に減少しています。

大動物臨床の獣医師は男女ともに30代から40代になると減少しており、女性は30%も減っています。

女性獣医師は30代・40代の無職率が高くなっており、女性獣医師の総数の6-8%にあたります。

小動物臨床医の総数は20~40代にかけて男女ともに大きな減少はありません。しかし、このグラフは転職した回数や雇用形態は反映されていないので注意する必要があります。

臨床獣医師の離職率

前項では、獣医師として働いている人数を記載しました。これには病院を変更する転職は含まれていませんでした。

では、実際に、勤めた病院を離職しているのはどのくらいの割合でしょうか。

小動物臨床医の離職率は1年間で60%

過去に大学が行った調査の結果、小動物臨床医の約6割が初めて就職した職場を1年以内に離職しています。(参照:獣医師の離職率について

厚生労働省の新規大卒者就職者の産業別離職状況によると、全産業の合計離職率は1年目で12%、3年目で32%でした。(参照:厚生労働省 新規学卒者の事業所規模別・産業別離職状況獣医師の国家試験合格者数は例年約1000名ほどなので、そのうち4割は小動物臨床に従事しています。つまり約240人が初年度に離職していると驚きの数字です。

小動物臨床医の離職率が高い理由

臨床3年以内の小動物臨床医の離職率が高い理由として、次のものがあげられます。主な理由を順番に見ていきましょう。

離職率が高い理由
  • 給与が低く、勤務時間が長い
  • ライフイベントに対応できてない
  • 人間関係が閉鎖的で相性の影響が大きい
  • スキルアップできない

小動物臨床医の離職率が高い理由#1
給与が低く、勤務時間が長い

獣医師の初年度の平均年収は250-350万ほどとされていますが、みなし残業やサービス残業も多いので時給換算にすると低くなります。拘束時間が長く変則的なので、求人情報に載ってない時間外労働は転職を考える理由になりえます。

休日出勤も多かったり、夜間の入院管理など、給料の出ない出勤も多いので注意が必要です。就職前に確認できると良いですね。

小動物臨床医の離職率が高い理由#2
ライフイベントに対応できてない

小動物臨床では、産休育休などに対応できていない病院も多いです。現在働いている20~30代の獣医師のうちの半数は女性です。結婚や出産などのライフイベントを迎えた時に、生活スタイルが変わります。その後も小動物臨床を続けることが難しく、離職を考える人が特に女性獣医師で多いようです。

一旦臨床医を休むことによって医学の進歩についていけなくなったり、勉強をする時間が取れなくなったりすると、離職の原因にもなります。

小動物臨床医の離職率が高い理由#3
人間関係が閉鎖的で相性の影響が大きい

人間関係が閉鎖的なため、離職の原因になることも多いです。実習の時の雰囲気と、実際働いた時とでイメージと違ったということがあります。

指導してくれる先生や保定で補助してくれる看護師さんとは一緒に診察を回していくので、常に行動を共にしていると実習の時には気付かない人間性が見えてきたりします。人間関係が嫌になっても、人数が少ない分、距離を置くことが難しいです…。

小動物臨床医の離職率が高い理由#4
スキルアップできない

院長が経営も担当していて指導まで手が回らないということがあります。外来診察にでるまで時間がかかったり、簡単な手術ですら独り立ちに時間がかかったり、獣医師としてのスキルが思うように身につかないと転職を考えてしまいます。

このような理由から1年以内の離職率は高いものの、自分に合った別の病院に再就職する獣医師が多いです。

大動物臨床医は女性獣医師の離職率が高い

牛などの家畜を診る大動物臨床医の初年度の離職率は高くありませんが、3年目で3割、5年目で5割が離職しているという報告があります。農林水産省のデータでは30~40代で就労人数が減少しているので、離職後は別の業種へ転職していると考えられます。離職率が高く、定着率が低い傾向は以下の理由が考えられます。

大動物臨床医の離職率が高い理由
  • 獣医師人口の1割と従事している人数自体が少ない
    • 一人当たりの負担が大きい。
  • 女性獣医師の場合
    • 結婚や出産のタイミングで別の獣医師がフォローできず、そのまま離職するケースが多い。
    • そのため30~40代で就労人数が減少する
  • 男性獣医師の場合
    • 一生を同じ職業・同じ地域で継続するかを考え、産業動物臨床獣医師から大きく転職するなら勤め始めて3-5年目というパターンが多い。

(参照:【就職/転職】なぜ新人獣医師がすぐに仕事を辞めてしまうのか?退職の理由とタイミングは?

いずれも高い離職率は臨床5年目までの若手獣医師のデータとなっています。10年以上同じ職場で働いている場合は、男女ともにライフイベントを挟もうと転職せずに終身雇用となるケースが多いようです。

動物病院選びのポイント

離職率が低い=いい職場とは限りません

離職率とは就職した人数を分母、離職した人を分子としたときの数値ですが、20年間に5人中3人辞めた職場と1年間に5人中3人辞めた職場では意味が変わってきます。数字だけにとらわれず、自分のなりたい獣医師の将来像を明確にしてから転職先を探しましょう。

病院との相性は人それぞれなので実習を通して見極める必要がありますが、いわゆる地雷病院のポイントは押さえておきましょう。

病院選びのポイント
  • 幅広い年代の獣医師がいるか
  • 獣医師一人あたりの症例数は適切か
  • 常に最新の情報を取り入れているか
  • 転勤の可能性はあるか

実際、筆者は小動物臨床医ですが、最初の就職先を1年で離職しています。それも踏まえて「病院選びのポイント」を紹介していきます。

病院選びのポイント#1
幅広い年代の獣医師がいるか

若手が定着しない病院は、不自然に世代が離れた獣医師しかいません。若手だからと手厚く対応してもらえる可能性は低く、辞めたくなるような人間関係や業務内容などが隠れていると思ったほうが賢明です。

実際、筆者には臨床2年目の先輩はいましたが、就職してから先輩が全然成長できていないことに気づきました…。実習時に一番歳の近い先輩に会えるといいですね。

動物病院選びのポイント#2
獣医師一人あたりの症例数は適切か

獣医師の人数に対して診察件数が多すぎても少なすぎてもよくありません

多すぎると、一つの症例をじっくり考えてみる余裕がなくなります。逆に極端に少ないと、診察に出るまで時間がかかり、思うように経験が積めない場合があります。

実際、筆者が1年目に勤めた病院は、獣医師の人数に対して診察件数が少なく、週に数件しか診察を行なえませんでした。

動物病院選びのポイント#3
常に最新の情報を取り入れているか

最新の知見を積極的に取り入れて診療をしていますか?

院長が当時習った考え方を続けている場合は要注意です。院長が勉強し続けている病院は、医学も進歩している病院のためオススメです。

自分が勉強しても、院長との意見が合わなかったり、実際の経験を積めなかったりすることが多いので注意が必要ですね。

動物病院選びのポイント#4
転勤の可能性はあるか

企業病院などで遠方のグループ病院へ転勤がある場合があります。

移動を命じられると、基本的には断れない場合が多いです。希望した病院以外の勤務地に配属される可能性があるか、確認しておきましょう。

就職先を選ぶときも、ここは譲れないという自分なりのポイントを考えておくことも大切ですね。

転職する理由の例を明確にしよう

転職を成功させるために、なんのために転職をするのか理由を明確にしましょう。転職する理由の選択肢として主なものを解説していきます。

転職する理由の例
  • 給与を上げたい
  • ステップアップ
  • ライフワークバランス
  • 転職したのちに目指すものを考える

転職理由の例#1
給与を上げたい

単純に給与を上げたいのなら、初任給より昇給率が大切です。

基本的に経験年数に応じて平均年収もあがるので、目先の金額に惑わされて転職を繰り返すのは悪手です。企業病院なら求人情報に公開されている場合もありますし、記載がない場合は実習に行った際にさりげなく働いている獣医師に聞いてみるという方法もあります。

また、基本給以外にも、残業代やボーナスの支給、交通費支給や学会参加費の補助のあるなしも年収に大きくかかわるので、必ず確認しましょう。

実際、給与が少なくも家賃補助が多いなどで、結果的に生活に余裕が生まれる場合も多いです。

転職理由の例#2
ステップアップ

同じ職場にいてこれ以上成長できないようであれば、転職を考えましょう。

単に環境が合わずに転職する際は、自分の実力が発揮できる職場を考えてから移動しないと、転職を繰り返すことになります。終身雇用を目的とするならば、キャリアアップが可能な企業病院などを選びます。開業を考えての転職であれば、開業を考えている地域の近くで働くと将来的にその場所で開業しづらくなります。

最近では事業承継という既にある病院を引き継ぐ方法もあり、この病院で数年働くことが条件になる場合もあるので、どのように経験値を積むのか考えてから就職先を選びましょう。

転職理由の例#3
ライフワークバランス

結婚・出産に伴い離職する際は、再就職後に働き続けられるかをよく検討する必要があります。

時短などの勤務形態があるか、残業時間は平均どれくらいか、突然の早退や休みに対応出来る人数がいるかなどしっかり確認しましょう。特に、自分と同じような状況で実際働いている人がいるかも重要で、制度はあっても利用できてないということがないかもチェックポイントになります。

就職する際に、実際働いている人はどうなのかを確認してから就職出来るといいですね。

転職理由の例#4
転職したのちに目指すものを考える

いい職場に転職することがゴールではありません。離職する理由はいろいろありますが、辞めた理由だけを判断材料に転職すると、別の悩みが出てきます。最終的に目指す獣医師像を明確にして、それが達成できる職場を選ぶようにしましょう。また、目標達成のためには自分自身も変わっていく必要があります。転職したことに満足せず、目標をもって仕事に取り組む良いでしょう。

何のために転職するのかを明確にしないと、せっかく環境を変えても状況は何も変わらない可能性があります。短期間で離職を繰り返すと、時間も労力も使いますし、後々再就職で不利に働くので注意しましょう。

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